この記事でわかること
- サイトの「持ち主」は4つに分かれていて、それぞれ確認先が違うこと
- ドメインの名義と期限を、WHOISで自分で調べる方法
- サーバーとWordPress管理画面に、自社の権限で入り直す手順
- 契約・著作権について、最低限知っておきたい考え方
- 二度と同じことで困らないための所有権チェックリスト
メールを送っても返事がない。電話もつながらない。そのうちにサイトの表示がおかしくなったり、ドメインの更新案内が届かなくなったりする。中小企業のサイトでは、珍しくない話です。
原因はさまざまです。担当者の退職、制作会社の廃業、単純に手が回っていない、というケースもあります。ただ、理由が何であれ、やることは同じです。「誰が何を持っているか」を確かめて、自社の名義と権限に戻していくことです。
多くの場合、サイトを作り直す必要はありません。順番に進めれば、ほとんどは自社で取り戻せます。
ステップ1:サイトの「持ち主」を4つに分けて書き出す
ひとことで「サイト」と言っても、実際には次の4つで成り立っています。持ち主も確認先も別々です。
| 対象 | 何のことか | 確認先 |
|---|---|---|
| ドメイン | example.co.jp のような住所 |
WHOIS、ドメイン管理会社(レジストラ) |
| サーバー | サイトのデータを置いている場所 | サーバー会社との契約 |
| WordPress管理者 | 管理画面に入るアカウント | WordPressのユーザー一覧 |
| 有料テーマ・プラグイン | デザインや機能のライセンス | 販売元のアカウント |
まず、社内にある資料を集めてください。制作時の契約書・見積書、請求書、制作会社とのメール、そして会社の口座やクレジットカードの明細です。サーバー会社やドメイン会社への支払いが自社から出ていれば、その契約は自社名義である可能性が高くなります。
ステップ2:ドメインの名義と有効期限を確かめる
最初に確認すべきはドメインです。ドメインの期限が切れると、サイトもメールも止まります。さらに、失効したドメインは第三者に取得されることがあります。
WHOISで調べる
ドメインの登録情報は、WHOISという仕組みで誰でも見られます。
.jp.co.jpなどは、JPRSのWHOIS(whois.jprs.jp).com.netなどは、ICANN Lookup(lookup.icann.org)
見るべき項目は3つです。
- 登録者(Registrant):法的な持ち主です。自社名か、制作会社名か。
- 有効期限:あと何か月残っているか。
- ネームサーバー:たとえば
xserver.jpやsakura.ne.jpを含んでいれば、そのサーバー会社を使っているヒントになります。
.com などは登録者が非公開になっていることがよくあります。その場合も、管理しているレジストラ名は表示されるので、問い合わせ先は分かります。
名義が自社だった場合
一番よくあるのが「名義は自社なのに、管理しているアカウントは制作会社のもの」というケースです。登録者本人として、レジストラに「自社アカウントへ移したい」と相談してください。本人確認の書類を求められるのが普通です。
なお .co.jp は、日本で登記している会社が1社1つだけ登録できるドメインです。登録者は原則として御社自身なので、取り戻しやすい部類です。
名義が制作会社だった場合
この場合、法的には制作会社のドメインです。名義の変更には、原則として制作会社の協力が必要です。ステップ6の手順で、書面で依頼してください。期限が近い場合は、レジストラにも事情を伝えて、取れる手段を確認しておきましょう。
ステップ3:サーバーの契約者を確かめる
ネームサーバーや支払い明細から、サーバー会社の見当がついたら、契約者を確認します。
自社名義の契約だった場合
サーバー会社の会員ページにログインできれば、話はかなり簡単です。ログイン情報が分からなくても、契約者本人として問い合わせれば、パスワードの再設定を受け付けてくれるのが普通です。
ログインできたら、この時点で一度バックアップを取ってください。多くのサーバーは管理画面からダウンロードできます。
制作会社名義の契約だった場合
この場合、サーバーの中には自社では入れません。注意したいのは、制作会社が支払いを止めると、ある日突然サイトが消えるという点です。
制作会社に移行への協力を求めつつ、並行して次の準備を進めておくと安心です。
- 自社名義で新しいサーバーを契約する
- サイトの文章・写真など、自社で用意した素材を手元に集めておく
データをもらえれば、そのまま引っ越せます。もらえなければ、集めた素材をもとに作り直し、ドメインの向き先を新しいサーバーに切り替えます。
ステップ4:WordPressの管理画面に入り直す
サーバーに入れれば、WordPressにもほぼ確実に入れます。
- ログイン画面の「パスワードをお忘れですか?」を試す。 ただし、管理者のメールアドレスが制作会社のものだと、再設定メールは向こうに届きます。
- サーバーの管理画面から再設定する。 サーバー会社によっては、WordPressのユーザーやパスワードを管理画面から変更できる機能があります。ない場合も、データベースから再設定する方法があります。操作を誤るとサイトが表示されなくなるので、自信がなければ、ここは専門家に頼んでください。
入れたら、次の順で進めます。
- 自社のメールアドレスで、新しい管理者アカウントを作る
- 「設定」→「一般」の管理者メールアドレスを、自社のものに変える
- 制作会社のアカウントは、すぐに消さずに権限を下げる。消すときは、そのアカウントの投稿を自社アカウントに引き継ぐ
ステップ5:有料テーマ・ページビルダーのライセンスを確かめる
見落とされがちなのがここです。有料テーマや、Elementor Proのような有料プラグインが、制作会社のアカウントで購入・登録されていることがよくあります。
ライセンスが切れても、すぐにサイトが止まるわけではありません。ただし、更新が届かなくなります。更新されないプラグインは、セキュリティ上の弱点になります。
管理画面の「プラグイン」「外観→テーマ」で、有料のものに印をつけてください。それぞれ、自社でライセンスを買い直すか、別のものに置き換えるかを決めます。
ステップ6:契約と法律の整理を、書面で進める
ここは法律相談ではなく、一般的な考え方の整理です。判断に迷ったら、弁護士や商工会議所の相談窓口を使ってください。
連絡の記録を残し、期限を区切る
電話やメールの日時と内容を記録しておきます。それでも返事がなければ、「いつまでに、何を渡してほしいか」を書いた書面を送ります。具体的には、ドメインの名義変更、サーバーのデータ、ログイン情報です。記録を残したい場合は、内容証明郵便が使えます。
会社がまだあるかを確かめる
法務局の登記情報(オンラインの「登記情報提供サービス」でも見られます)で、制作会社が解散・破産していないかを確認できます。破産している場合は、破産管財人が窓口になります。
著作権は「契約に何と書いてあるか」
自社で用意した文章や写真は、御社のものです。一方、制作会社が作ったデザインや独自のプログラムは、契約で譲渡を決めていなければ、制作会社側に著作権が残るのが原則です。契約書の「著作権の帰属」「納品物の権利」の条項を確認してください。
保守契約が続いていれば、解約も書面で
毎月の保守料を払い続けている場合は、契約書の解約条項に沿って、書面で解約を通知します。
ステップ7:取り戻したら、最初にやること
権限が戻ったら、その日のうちに次を済ませます。
- サーバー・ドメイン・WordPressのパスワードをすべて変更する
- 心当たりのない管理者ユーザーを確認し、整理する
- バックアップを取り、サーバーの外(自社のPCやクラウド)にも保存する
- WordPress本体・プラグイン・PHPのバージョンを確認する
何年も更新されていないサイトは、かなりの確率で古いプラグインを抱えています。IPAの「2024年度 中小企業における情報セキュリティ対策の実態調査」では、不正アクセスの原因の48.0%が「修正プログラムの未適用などの脆弱性」でした。具体的な対策はWordPressのセキュリティ対策15項目にまとめています。
二度と困らないための「所有権チェックリスト」
次に誰かへ制作や保守を頼むときは、契約前にこの表を埋めてください。今の状態の確認にも使えます。
| 確認項目 | 自社であるべき状態 |
|---|---|
| ドメインの登録者 | 自社名義 |
| ドメイン管理アカウント | 自社のメールアドレスで登録 |
| ドメインの有効期限・自動更新 | 自社が把握し、自動更新オン |
| サーバーの契約者 | 自社名義・自社払い |
| サーバー管理画面のログイン情報 | 自社が保管 |
| WordPressの管理者アカウント | 自社用が最低1つある |
| WordPressの管理者メールアドレス | 自社のアドレス |
| 有料テーマ・プラグインのライセンス | 自社アカウントで購入 |
| メール(MX)の設定先 | 自社が把握している |
| 著作権の帰属 | 契約書に明記されている |
| 解約時の引き渡し内容 | 契約書に明記されている |
| ログイン情報の保管場所 | パスワード管理ツールなど、社内で決めた場所 |
業者に作業用のアカウントを渡すのは問題ありません。大事なのは、持ち主は自社で、業者には「鍵を貸している」状態にしておくことです。こうしておけば、業者を替えるのも、自分で更新するのも自由です。詳しくはホームページの所有権チェックリストで解説します。
困ったときは
wpexperts.jpでは、ドメイン・サーバー・管理画面をすべてお客様の名義に戻したうえで、保守を引き継いでいます。作り直しを前提にはしていません。
- まずは今のサイトの状態を知りたい方は、無料セキュリティチェックでURLを入力してみてください。バージョンの露出や、よくある設定の不備が分かります。
- 「名義がどうなっているか分からない」という段階でも構いません。お問い合わせフォームまたはLINEから、状況をお聞かせください。